前回の続きです。
月経とは「天癸・臓腑・気血・経絡が協力して子宮で行う生理現象」でした。
今回から二回に分けて、月経と特に関わる経絡(衝脈・任脈・督脈・帯脈)について書いていきます。
今回は衝脈・任脈について書いていきます。
まず、そもそも経絡って何なの?となりますが、これは気血が流れる道路と思って下さい。
経絡との呼び方は、経脈と絡脈の総称です。
経脈には(十二正経・十二経別・奇経八脈)が存在し、
絡脈には(十五絡脈・孫絡・浮絡)が存在します。
この様に経絡にも色々ありますが、月経に深く関わる脈は、奇経八脈と呼ばれる脈のうちの四脈です。
では、それぞれについて説明していきます。
衝脈
「要衝」という意味があるので、衝脈と呼ばれます。
それほど重要である脈です。
「十二経の海」「血海」「五臓六腑の海」「経脈の海」とも呼ばれます。
衝脈の循行は5本に分けられます。
①下腹部内部→気衝穴に浅く出る→足の少陰腎経と一緒に上行→臍の傍らを通って胸中に入って散る
②胸中に分散した後で上行し、鼻の内竅に達する
③腎下に起こり、気衝穴に出る→大腿内側を下行して膝窩へ入る→脛骨内縁に沿って内踝の後面に達して足下に入る
④脛骨内縁→内踝へ斜めに入り、足背から第1̪趾に行く支脈
⑤下腹から分かれ体内に向かって脊柱を貫き、背部を行く支脈
働きとして、
①十二経脈の気血の調整
②精血が集まる場所として月経と深く関わる
があります。
①十二経脈の気血の調節
例えば、
霊枢 「血海有余ならば、則ち常に其の身大なりと想い、怫然として其の病む所を知らず。血海不足すれば、亦常に其の身小なりと想い、狹然として其の病む所を知らず。」
とあります。
血海は衝脈の別名との事でした。
ここからも衝脈の盛衰が全身へ影響する事を指します。
②精血が集まる場所として月経に深く関わる
素問 上古天真論篇
「十四歳になると、天癸が発育・成熟し、任脈はのびやかに通じ、太衝の脈は旺盛になって、月経が時に応じてめぐってきます。」
「四十九歳になると、任脈は空虚となり、太衝の脈は衰え、天癸は竭きて、月経が停止します。」
以上から、衝脈は月経と深く関わる事が分かります。
任脈
任脈は「陰経の海」とも呼ばれます。
その別名から分かる様に陰脈全てに対して大きな影響力を持っています。
また、任脈は
「任脈は胞胎を主る」
「任脈の気が通じる事によって月経の来潮が促進され、正常な妊娠・成長が行われるようになる」
と言われ、胎児の生育や月経の来潮において欠かせない脈です。
任脈の走行経路は二本あります。
①下腹の中極穴が起点→そこから身体の全面を真っすぐ昇っていく→オトガイ→顔→目
②子宮が起点→脊柱を裏面を上行
任脈の病は全て任脈の走行部位に表れます。
男女ともに生殖器・肛門・尿道・咽喉部などの病です。
より具体的な例を出すと、任脈の病としての子宮筋腫の治療です。
素問 上古天真論篇には
「任脈に病変が発生すると、男子では寒邪が腹内に結して七種の疝病を起こしやすくなり、女子では帯下や癥瘕、積聚が生じやすくなる。」
とあります。
癥瘕は「腹部に硬結が出現し、脹満・陣痛を起こす」とされ、これは子宮筋腫などにあたります。
この様な方は無月経になりやすいのですが、それは任脈が阻滞されて通じなくなるためです。
以上からも任脈が月経と深い関係にある事が分かります。
衝脈・任脈について書いていきました。
この二脈と次回書いていく督脈は、全て胞宮から起こる為「一源三̪岐」と呼ばれ、出発点が同じなので、互いに影響しやすい脈になります。