前回の記事半夏夏朴湯のある程度詳しい解説と呑気症でもご紹介した様に、
半夏厚朴湯は効く人にはとても良く効く処方です。
しかしきちんと内容を理解していないと誤った治療に繋がります。
今回は比較的に良くある半夏厚朴湯の誤治について書いていきます。
咽の違和感=半夏厚朴湯を処方していると誤治に繋がる
当薬局では処方せんも取り扱っているので、どんな人に半夏厚朴湯が処方されているかも把握しやすいのですが、
一番の問題点として、半夏厚朴湯を「咽に違和感のある人に使う漢方薬」として覚え、きちんと弁証せずに処方する先生が多い気がします。
そうすると一定数の人には効くが、一定数には効かないと言った数撃ちゃ当たる現象が起きてしまいます。
半夏厚朴湯の咽の違和感の背景には「肝気鬱結・肺胃宣降失調により生まれた痰が咽中でとどまる事により起こっている」と考える必要があります。
文字だけ見ても、
「肝気鬱結だから精神的な問題を抱えているんだろうな~」とか
「胃気が降りないのなら食欲はないんだろうな…」とか色々頭に浮かびます。
処方内容も見ても
「この処方は乾かすものが多いから咽が渇いて便もコロコロの人には間違っても使えないな。」
などの判断がつきます。
しかしこの認識がないので咽しか診ずに処方しているケースも多々あります。
多い間違いが「陰虚により生まれた痰による咽の違和感」に半夏厚朴湯を処方して治りきらないパターンです。
高齢者にも多く見られるのですが、乾燥した身体や熱を持った体では津液が傷つき、痰が生まれます。
燥痰と言うのですが、ネチョっと粘土の高い痰が喉にへばり付くと吐き出しにくく、咽に違和感が生まれます。
津液が傷つくと口腔内・腸内も潤せないので、ドライマウス・コロコロ便・舌が割れる(裂紋)・乾燥肌などが現れます。
半夏厚朴湯の内容は乾かすものが多く入っているので、
頭の中に「乾いている人をこれ以上乾かしてどうするんだ!」というツッコミがはいるのですが、そのまま処方箋が流れてくる事も…
間違っても処方のおかげで治る事が無いですし、むしろ更に痰の粘土も上がってしまう事で増悪します。
この際の本来の対応は麦門冬湯・清燥救肺湯・金水六君煎など様々な処方が考えられます。
他にも鑑別ポイントはまだまだありますが、乾燥傾向から見比べる事が一番簡単かと思い、書いてみました。
患者様にそれが誤治なのか判断は難しいかと思いますが、長期間服用していて、いつまでも効果が感じられず、診断時間や問診時の質問短すぎると感じる際には一度別の先生にかかる事も考えてみる必要があると思います。
漢方薬は使い方次第で毒にも薬にもなるものです。