半夏厚朴湯について調べられている方も中々多いので、ある程度きちんとした情報を出した方が良いかなと思い書いてみました。
心療内科でも比較的ポンポン処方されますが、効かないからと相談に来られた方の状態を診るとこの人に半夏厚朴湯?という事も多々あります。
実はきちんと内容を把握していないと全然効かない処方だったりします。
自身は処方する際にどんな処方でも、「中医学の理論で考えた際にこの状態に使えるか?」を考えますがそれにそぐわない処方がされている時は患者さんも効果を感じていない事が多いです。
漢方薬にも比較的簡単に使えるものとそうでないものがあります。
芍薬甘草湯の様なものは比較的簡単に使えますが、半夏厚朴湯は割と難しい部類かもしれません。
今回の記事では、半夏厚朴湯を中医学的に解説していきたいと思います。
半夏厚朴湯の基本的なターゲットは咽!
半夏厚朴湯は金匱要略と言う古典書で
「婦人の咽中に炙臠有るが如きは、半夏厚朴湯これを主る。」とあります。
炙臠とは、炙った肉の切れの事で、咽中にそれがある様に感じたら半夏厚朴湯を飲みなさい。との意味です。
現代人には分かりにくい例えです。
学生時代の友人は、「小さいおっさんが喉に居座っている」と表現していましたが、私はこっちの方がしっくりきましたね。
取りあえず何かが咽に居座った感じがして違和感がある これが咽中炙臠の核心部分です。
では、何故この様な症状になるのでしょうか?
答えは肝気鬱結→肺胃宣降失調による気滞痰結です。
この意味を書いていくと見ている人は混乱しそうなので、この状態になるとどんな症状が現れるか挙げていきます。
肝気鬱結は気持ちが伸び伸びとせず、塞ぎやすい状態です。
出発点は何か考え事がある方に多いですね。
大塚敬節先生は神経質な性格で不安感・とり越し苦労など訴える人に多いとしました。
実際の臨床でも、半夏厚朴湯が合う人は生真面目な性格な方が多い印象を受けますね。
咽に関しては痰と気滞が咽中で結びついた影響なのですが、何かある感じがするのでエヘンっといつも言っている人も多いです。
また、肺にも影響しているので、
咳が出たり、お腹が張ったり、息苦しさを感じたりします。
胃にも影響しているので、吐き気、食欲不振、ゲップ、しゃっくりなんかが出る事もあります。
痰湿の影響でめまいが起きる方もいます。
私は割と呑気症で悩んでる人に使う事が多いです。
呑気症=半夏厚朴湯とまではいきませんが、お困りの方に一定数半夏厚朴湯が合う人がいるのも事実です。
呑気症は空気を飲み込む事でお腹が張りますが、これは中医学で言う腹満にあたります。
また、呑気症は細かい事を気にして不安になりやすい人とされますが、ここは肝気鬱結や大塚敬節先生の神経質・とり越し苦労・不安感など一致する部分があります。
中医学の書籍には他にも脈滑弦・舌白膩もしくは薄白苔などもありますが、この情報は専門家向けですね。
基本的には赤文字記載の症状が出ている呑気症に使います。
働き盛りの30代40代の男女がこの状態になりやすいと言われ、責任などのストレスから必要になる方が多いです。
半夏厚朴湯の構成
それでは、どの様な生薬がどの様にして心身に働きかけるかを書いていきます。
出来る限りかみ砕きますが、こちらは先程より分かりづらいかと思います。
まず半夏厚朴湯に含まれる生薬は
「半夏・厚朴・茯苓・生姜・紫蘇葉」の五種類です。
それぞれの目的を見ていきましょう。
半夏
半夏厚朴湯の半夏の目的は燥湿化痰・降逆止嘔です。
咽中炙臠では痰が咽中にありますので、この痰を取る必要があります。
この痰を取る際に半夏が活躍します。
また、半夏には胃気を下降させる働きがあるので、吐き気や食欲不振に使用されます。
厚朴
薬性提要には「気を下して満を散じ、痰を消して食を化す」と書かれ、下気除満作用があり、腹満に多用されます。
こういう人はガスが溜まってお腹がポコポコと音が鳴る事も多くありますが、その様な状態にも使えます。
また、半夏と協力して咽中で気滞と結びついた痰を消す作用もあります。
茯苓
脾に存在する湿痰を尿から排出する働きがあります。
脾の働きが良くなると痰が生まれにくくなります。
生姜
丘美中は半夏と生姜の薬対(生薬の組み合わせ)について
「胃に痰涎があって嘔吐するものに、この薬対が無ければ効果がない。」と述べました。
痰湿による吐き気止めには常用される組み合わせです。
また、半夏には毒性がありますが、その毒性を鎮める働きがあります。
紫蘇葉
芳香行気・寛胸舒肝に働くと言われます。
芳香性で行気作用があるので肺と肝の気滞の解除を行います。
以上の生薬が重なり合って症状を取り去っていきます。
半夏厚朴湯を理解する為にはまだまだ必要な情報は不足していますが、一定レベルの解説は行いました。
どんな薬だろう?とお困りの方の手助けになれば幸いです。