風邪のひき始めについて

今回は風邪のひき始めを中医学的に解説していこうと思います。

今年はマスクの着用率増加によりインフルエンザにかかる方が非常に少ないそうですね。

新型コロナウイルスでは、飛沫感染よりも接触感染の方がかかる確率が高いとの意見もあるので、手洗い・うがいはしっかり行う事が大切になります。

徹底する方は鼻うがいや目からの感染も言われるので保護眼鏡なんかも使っていますね。

私も手を洗う前は目をこすりたくなっても意地でもこすらない様に気を付けています。

さて、ここからは中医学の風邪について書いていきます。

外的要素による風邪にも大きく分けると、風熱邪・風寒邪がありますが、今回は冬の時期で非常に多くなる風寒邪について書いていきます。

風寒邪ってなに?

風寒邪を考えるには、風邪と寒邪を考える必要があります。

この辺りは傷寒論という本に詳しく書かれています。

この本は中医学・漢方どちらの治療をしている人にとっても必読書です。

中医学や漢方は難しい難しいと言われますが、風邪の初期症状の診断はあまり難しく考える必要はありません。

強い悪寒(ゾクゾク感)がしてなんか風邪をひきそうな感じがする。

この症状があれば風寒邪を疑えば良いのです。

患者様に色々聞いてみても、大体風邪のひき始めって感覚は分かる人が多いみたいですね。

このゾクゾク感は寒邪が体表に走る太陽膀胱経の気の流れを悪くする為です。

この太陽膀胱経に気は衛気とも呼ばれますが、衛って衛兵とか守衛さんとかに使われますね。

訓読みで「まもる」ですが、まもるにも守るとか護るとか色々あります。

「衛る」は「中のものを外からまもる」と言う意味です。

体表部で外から悪い邪気を受けても体内への侵入を防いでくれるので、イメージにピッタリの漢字ですね。

衛気は普段から外からの邪気(ウイルスなども含む)から人の体を守ってくれる気なのです。

この衛気の働きの一つに、温煦作用と言う「温める作用」があります。

風寒邪が体表部に取りついて太陽膀胱経の気(衛気)が行かなければ、「温煦作用」が失われるので、寒気がするわけです。

これが風邪のひき始めのゾクゾク感の正体です。

衛気は太陽膀胱経の気と言いましたが、太陽膀胱経は体表部(背中側)を走行しています。

なので、風邪のひき始めは首・腰などにも影響しやすいんですね。

この初期段階で治療しないと、風邪をこじらせて身体を悪くします。

風邪なんてちょっとの期間しかひかないでしょ?と感じるかもしれませんが、まれに長期間引きずる事もあり、一年前から不調になったと言う人が、実は一年間風邪を引きずっていた症例などもあります。

そんな時は問診で不調のきっかけを聞けば、「風邪をきっかけにずっと体調が悪い」と感じている人もいますね。

また、診断の際は脈がいつもより浅い位置に浮いてくる浮脈が現れます。

汗をかいているかも凄く重要!

そんなこんなで、「寒気が強くて悪寒がして風邪をひきそう。これは風寒邪だな!」と判断出来た時でもその時点で処方を決めてはいけません。

傷寒論を見ても、それは基本情報なだけで、まだまだ診断していかなければいけない事が分かります。

その重要な指標に一つが

「汗をかいているか」

です。

汗と言っても滝のような汗ではなく、皮膚を触ったらしっとりしている様な汗です。

太陽膀胱経の病(太陽経病)は、大きく

中風・傷寒に分けられます。

この二つを分類する時に大切なのが、汗なのです。

ここは自汗・無汗として差別化されます。

自身でもこの辺は診断出来て、

「肌を触ってしっとりしているか?」を見て下さい。

しっとり悪寒→中風

さらさら悪寒→傷寒

です。

漢方薬的な説明では体力があるかどうかと言われますが、中医学では汗を見ます。

ここで汗をかいていなければ麻黄の入った漢方薬から選んでいきます。

ここで汗をかいていれば桂枝湯の類から選んでいきます。

ここを間違うと風邪の症状は悪化してしまいますので、汗はとても重要です。

また、冷えによって起こっているので、その日の寝る前までにしっかり服用してその日のうちに治しておく方が良いです。

寝ると衛気と言う闘う力が体内に潜っていくので、体表部の温煦作用がおろそかになり邪気が中に侵入しやすくなります。

インフルエンザやコロナなど様々なウイルスがありますが、軽症のうちに対応する事がとても重要です。

自身でゾクゾクしておかしいなと感じたら近くの専門でやっている漢方薬のお店に相談をおススメします。

このご時世ですので、風邪の症状の際は念のため事前に電話で確認した方が良いと思います。

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