ドキドキして心臓が鳴ってコントロール出来ない状態でお困りの方は意外と多くいらっしゃいます。
循環器内科に行っても原因が分からずどこで治療を受けようか分からないなんて事も…
当薬局に動悸のお困りでいらっしゃるお客様は
「病院で検査したけど異常が見つからなかった」
方が大半です。
もし対処法が見つからずお困りの方は中医学での治療も視野に入れてみて下さい。
中医学の治療では、検査結果よりその方の自覚症状を大切にします。
検査結果がどうであれ、「胸がドキドキする」自覚症状が出ていれば治療出来ます。
今回は中医学的な動悸の考え方をご紹介していきます。
中医学的な疾患名は心悸
このコントロール出来ない胸がドキドキ状態を中医学では心悸と言います。
心悸のうち
ビクビクして心悸したり、心悸して驚きやすく、怖がって落ち着かない…驚悸
激しくドキドキし、胸だけでなくお腹まで動悸して落ち着かない…征忡
と呼ばれます。
驚悸は外的要因により引き起こされます。例えば何かによる驚き・恐れ・怒り・悩みなどで引き起こされます。
征忡は内的要因により引き起こされます。基本的に常に動悸が起こっています。疲れなどでもより悪化し、驚悸よりも重症です。
驚悸を長い期間放置していると征忡に変化する事も多いです。
私は動悸が主訴の問診の際は
・動悸の持続時間の確認
・規則性はあるか(精神的な負荷がかかれば起こるなどの規則性)
・いつから起こっているか
・胸部以外にも動悸は起こるか
この問診を行う事で動悸の重症度を確認しています。
実際の診断でもこの四項目ですぐに治りが早いものかも特定しやすいです。
心悸のタイプ分け
心悸の患者様がいらっしゃった際、私は大体以下の大枠に当てはめて考える様にしています。
虚証
①心気虚 ②心血虚 ③心陰虚 ④心陽虚 ⑤心虚胆怯
実証
⑥水飲凌心 ⑦心血瘀阻 ⑧痰火擾心
それでは、それぞれにどんな特徴があるか簡単に見ていきましょう。
①心気虚
症状:動悸・易疲労・息切れ・汗が漏れ出る・息切れ・声が小さい・頭が働かない・めまい・力が入らない・運動後に悪化・軽度の冷え性など
機序:心気が不足すると心神が養われなくなり、心の機能が低下する事で動悸が起こります。
原因:高齢・長期の病・発汗過多・瀉下薬の使い過ぎなどで気を損傷など
②心血虚
症状:動悸・多夢・血の気のない顔色またはくすんだ黄色・睡眠が浅い・めまいなど
機序:心血が不足しても心神が養われず、心血により神を滋養できない。睡眠時は神は心という場所に帰りますが、その為には心血が必要です。
心血が不足すると心を養う事が出来ず、神も心に舎る事が出来ずに不眠。
原因:考え過ぎて心陰血損傷・出産や事故での大出血・飲食の不摂生など
③心陰虚
症状:心悸して胸苦しい・寝る前になると手足が熱くなる・耳鳴り・腰がだるい・落ち着かない・忘れっぽいなど
機序:腎陰が虚すと心陰も虚してしまい、腎陰虚とともに心陰虚になり、心陰は不足してしまいます。すると腎陰(腎水)が心火を抑える事が出来なくなり、心腎不交とも言われる状態になります。
心血虚と類似点も多いものですが、こちらは熱症状が顕著になっています。
原因:過度な性生活・長患い・陰虚体質など
④心陽虚
心気虚と基本的に症状は同じなのですが、こちらは陽虚なので、凄い冷え性です。
気虚でも多少は冷え性ですが、陽虚ほど顕著に寒がりません。
⑤心虚胆怯
症状:心悸・大きい音が苦手で驚きやすい・怖がり・睡眠が浅い・パニックを起こしやすいなど
機序:急に驚かされたりすると心がよりどころを無くして、神が帰れないため考えがまとまらなかったり、慌てふためいてしまう。
原因:普段より胆の気がしっかりしていれば多少の事では動じませんが、胆と書いて「きも」と呼ぶように中医学では胆は肝っ玉(胆っ玉)を指し、ここが弱ければいつもビクビクおどおどしてしまいます。
⑥水飲凌心
症状:動悸・めまい・むくみ・冷え性・咽が渇くが水を飲みたくない・悪心して涎を吐く
機序:陽虚のために水を動かす力が無い。そのため水が停留し、心に影響を与えて動悸します。
原因:普段からの陽虚体質
⑦心血瘀阻
症状:動悸・時々心臓が刺痛がある・息切れ・唇や舌の色が暗紅色など
機序:心脈が血瘀に阻まれると心血による滋養が行えないた心悸
原因:病の長期化や慢性的なストレス
それぞれのタイプで使われる生薬は違うので、まずは大枠に当てはめる事で適応する生薬を考えていきます。
そこからその人独特の症状なども重ねて考える事で考えられる漢方薬の加減を行っていきます。