久しぶりに生薬以外の事も書いていきます。
今回は恐怖症をお持ちの方にも意外と漢方薬が良いとの話です。
その為に「恐れ」という感情を中医学で考えていきます。
まず、恐って何だという話なのですが、漢字の意味から探ると
祈りの道具である「工」を両手に高く掲げる形から来ています。
巫祝(みこ)は神に祈り、神を迎える時この様な姿勢をとりますが、その時の神をおそれ、かしこまる心情を恐と言います。
何か小さくなっている様子ですね。
少なくとも大きな態度ではないでしょう。
続いて、黄帝内経(素問・霊枢)から恐に関しての情報を抜き出してみましょう。
黄帝内経における恐の記載(一部)
霊枢
経脈篇「腎…気足らざれば則ち善く恐れ、心惕惕として人の将にこれを捕えんとするが如し。」
素問
陰陽応象大論篇「喜びは心を傷り、恐は喜に勝つ」
陰陽応象大論篇「腎気は骨髄を滋養し、骨髄は充実していればまた肝を生じ養います。…病変の現われとしては戦慄となり、竅にあっては耳となり、味にあっては鹹隣、志にあっては恐となります。恐は腎を損ないますが、思は恐を抑制します。」
挙痛論篇「恐れれば則ち気下る。」
以上から、恐れによる影響により、
・腎を痛める
・腎を痛めると更に恐れやすくなる
・気が下行する
・人から捕まえられそうな、追われている様な感覚になる
などが分かります。
恐怖により、腎を痛めると封蔵機能が損なわれるので、身体にも影響が出ます。
すると下から本来出すべきタイミングでは無いものが漏れ出ます。
例えば、婦人科で言えば流産しやすかったり、大小便失禁をしやすかったり、夢精が起こったりなどです。
また、腎は本来は上昇して心火を高ぶらない様にしていますが、この昇降バランスが崩れると心火を抑制できず、精神的に高ぶり、更にパニックなども起こりやすくなります。
中医学の治療はこういった色んなことが怖くなった様なメンタルの状態を整える事も得意分野の一つですね。