「漢方とは」で簡単に説明しましたが、「漢方」という分類は、江戸時代に日本へ伝来した西洋医学である「蘭方」と区別するために用いられたもので、中国の伝統的医学「中医学」とは異なります。
現代では、この「中医学」と日本固有の「漢方」をひとまとめで「漢方」や「東洋医学」と認識している方も多いようです。
以下に、日本固有の「漢方」の歴史について解説いたします。
漢方の伝来
漢方の基となる「古代中国に発する経験医学」が日本に導入されたのは5~6世紀頃と考えられています。
6世紀までには、仏教など他の大陸文化と同様に朝鮮半島を経由して伝来し、7世紀に入ると遣隋使や遣唐使の派遣によって中国から直接導入されるようになりました。
奈良時代から平安時代までは、貴族など高い階級の限られた人だけの医療でしたが、鎌倉時代~南北朝時代になると、医療の担い手が宮廷医から禅僧に替わり、医療の対象が一般民衆に拡大し始めました。
日本の漢方へ
中国から伝来してきた経験医学が次第に日本独自のものになり始めたのは、鎌倉・室町時代から江戸時代前期と考えられています。
江戸時代中期には、名古屋玄医を始祖とし後藤艮山を祖とする「古方派」が出現し、日本漢方の始まりといわれています。
その後、山脇東洋などに引き継がれ、吉益南涯が発表した「気血水理論」という考え方が現在の日本漢方の考え方の基礎になりました。
漢方の衰退
しかし、明治時代に入り1874年以降は、明治政府の政策によって西洋医学に基づく試験制度を制度化したため、それまでの漢方医は医師と名乗ることが出来なくなりました。
したがって、医師免許を取得した医師が漢方医学の研究や診療をすることによって、漢方が生き長らえてきました。
現代の漢方
その後多数の漢方医師の努力によって、1950年に日本東洋医学学会が発足し、1976年には漢方方剤のエキス剤が健康保険適用になり、一般の病院でも次第に広く用いられるようになりました。
とはいえ、現在の漢方では薬剤師や鍼灸師が担い手の中心となっており、未だに「民間療法」的なイメージを持つ人が多いというのが現状です。
しかし、「がん」などに代表される西洋医学だけでは解決できない病気が増えてきたことで、その補助的な意味合いも含めて漢方が見直され始め、がん専門病院での漢方の導入が増えたり、欧米での漢方の研究が盛んになり情報が逆輸入されるようになったりしています。
当くるみ薬局でも漢方相談を承っていますので、お気軽にご相談ください。