生薬の解説を行っていきます。
漢方薬は生薬が集まって出来たものなので、生薬一つ一つの理解は選薬する上で必須の条件です。
今回は威霊仙について書いていきます。
この生薬は様々な使われ方がされます。
まずは頭に馴染みやすくする為に、本草鋼目にある威霊仙のみで患者を治したエピソードを少しいじってどんな生薬か紹介していきます。
威霊仙を飲んだら歩ける様になった話
ある所に手足が不自由になり歩けなくなった人がいました。
その人はもう十数年歩く事が出来ていません。
やはり歩けない事は辛いので、腕のいいお医者さんに藁をもつかむ想いで診てもらいました。
病人は治る事を期待して治療を受けますが、それでも治る事はありませんでした…
しかし家族は諦めきれず、その患者を道端に座らせ、
「私の家族を治せる方はいませんか?」
と道行く人に尋ねていきました。
するとそこにたまたま新羅のお坊さんが通り、
「この病は治せるよ。治せるんだけどその植物がこの土地にあるかどうかが問題だ。」
と言いました。
家族は何とかお願いし、お坊さんに山へその植物を採りにいってもらいました。
その時お坊さんが持って帰ってきた植物が威霊仙です。
その薬草を服用させると、患者は見事数日で歩く事ができる様になりました。
本草鋼目の作者、李時珍は威霊仙の名前について
「威とはその性の猛なることを意味し、霊仙とはその功力の神速なる意味をいったものだ。」
と述べています。
方剤から考える威霊仙の効果
日本で漢方治療にあたる治療者が威霊仙の入った漢方方剤を思い浮かべた時、多くの方の頭には疎経活血湯が浮かぶのではないでしょうか?
疎経活血湯は、万病回春 痛風にて
「遍身走痛して刺すが如く、左の足痛むこと尤も甚だしきを治す。
左は血に属し、多く酒色損傷に因りて、筋脉虚空にして、風寒湿熱を被り内に感じ、熱は寒を包み、則ち痛みを傷る。
此れ白虎歴節風に非ざるなり。」
とあります。
これを解釈すると
①普段から飲酒癖があり、酒の熱によって血が渇いて血虚の状態。
②血虚している所に風湿の邪気が入り込み、経絡の流れを悪くする為に気が流れないため痛みが発生する。
③ある程度長期化する事で血が居座り、瘀血も発生している。
以上の事が考えられます。
威霊仙は、祛風除湿・通絡止痛作用を持つので②に対してアプローチして痛みを治します。
他にも威霊仙の入った処方として、二朮湯もありますが、これも肩の痛みを通す事で治します。
以上から、威霊仙の通す力が今の漢方治療にも生かされている事が分かります。
関節リウマチ・痛風などがある方はこの生薬が入った処方を考えてみても良いと思います。