烏薬の三つ目の使われ方をご紹介していきます。
これ以外にも別の使われ方もあるのですが、烏薬だけ書いていても何だかなと思うので、今回で終わらせます。
烏薬の使用範囲は広いですね。
さて、今回ご紹介する効果は烏薬の疏肝作用です。
前回の記事でご紹介した烏薬の作用機序は冷えると下腹部が痛むとの事でした。
それだけだと烏薬を使うときは絶対冷えていると解釈してしまいます。
もちろん、温性の生薬なので病的な熱症状がある時は使えませんが、冷えの傾向が顕著でなくても使われる時もあるという事です。
それを表している処方の代表が四磨湯・加味烏薬湯ですね。
今回は四磨湯から烏薬の疏肝作用を探っていきます。
四磨湯を知る為の肝の理解
四磨湯は悩み・怒り・抑うつなど心の不調により
胸が苦しい、息がしづらい、上腹部が張る、食欲不振などが現れた方の心身を治す処方です。
専門的に言えば、七情内傷により肝気欝結して肺と胃の気の流れが悪くなって狂った状態です。
大雑把に言えば、
「感情のコントロール不全によって肝気の流れが悪くなって胸がいっぱいになり、呼吸がし辛いなどの状態」ですね。
肝気の流れが悪くなると何故こういった状態になるのか考えてみると、
肝喜条達という言葉が参考になります。
これを和訳すると「肝は条達を喜ぶ」を喜ぶという意味になります。
条達とは、「疏通する・のびのびする」という意味で、疏とは流れるや通すとの意味です。
真剣な悩み、怒りなどを抱えたままのびのびと過ごしている人ってあんまりいないですよね。
つまり感情の不具合があって伸び伸びした感情が保てなくなり、身体に影響してしまった状態です。
魏之绣は柳州医話で「七情病は、みな肝に原因がある」と言いましたが、それほど肝は精神的な不調と関わりが深いのです。
日本では四磨湯も加味烏薬湯も恐らくどのメーカーも販売していませんが、小太郎漢方から出ている芎帰調血飲第一加減の応用などに使える認識だと思うので書いてみました。
ちなみに四磨湯・加味烏薬湯の構成は以下の通りです。
四磨湯《厳氏済生方》:檳榔子・烏薬各9;人参・沈香各3
加味烏薬湯《済陰綱目》:烏薬・砂仁・木香・延胡索各6;香附子12;炙甘草5;生姜3