生薬解説 茴香②

前回の続きです。

今回は茴香の効果として、理胃和胃の作用を挙げます。

茴香も色んなシーンに使えますが、日本では今回説明していく使われ方をする事が多いですね。

その使い方は安中散の意味を探っていけば分かりやすいです。

茴香の入った安中散の効果

安中散は日本では割とメジャーな漢方薬で、大雑把に言うと胃が冷えた状態に使います。

前回の説明では痛みの部位は下腹部でしたが、安中散の痛みは基本的に上腹部に現れます。

胃の位置を確認してみましょう。

画像は鍼灸指圧自然堂様より引用させていただきました。

胃は上の方にありましたね。

この部分が冷えています。

以下は胃が冷える事で起こる症状を箇条書きで書いていきます。

・上腹部痛

・冷えると悪化し、温めると軽減する

・強い痛み

・胃酸が上がってきて胸が気持ち悪い

・四肢の倦怠感

・肌が黄色くなる

・唇が真っ青で顔面蒼白

・舌苔は白潤、脈は弦か沈緊が多い

などが代表的な症状です。

お腹を冷やしたり、冷たい飲食物を摂取する事で起こりやすい状態です。

安中散の中の茴香の役割は?

では、安中散の構成を見ていきましょう。

安中散は「桂皮・延胡索・牡蛎・茴香・甘草・縮砂・良姜」で成り立ちます。

ここでの茴香の意味は冷えによる痛み・吐き気を止める事にあります。

他薬と協力して効果を更に高めていますが、安中散には茴香が無くてはならない生薬だと思います。

前回の解説と合わせると、茴香の作用点として、上腹部〜下腹部までの腹部の痛みに多用される事が分かりますね。

この冷えによる胃腸障害の状態になるのは冬だけかと思いきや、意外と夏場の冷たいものでもこういった症状は起こります。

夏はお腹が意外と冷えた状態にあるので、これからの時期は気をつけてくださいね。

余談 安中散の応用

日本には浅田宗伯先生が書かれた「勿誤薬室方函口訣」と言う名方剤解説書があります。

ここには和田東郭先生の

「婦人経閉などに桃仁・紅花・虎杖・蘇木を用ゆるは素人療法なり。安中散にて経を通ずることあり。其の経閉するは何故ぞと工夫して対症の薬を用ゆれば、必ずしも血薬を用いずとも通経すべし。」

と言った言葉が紹介されています。

これを私なりに解釈すると

「寒邪が胞中に侵入して血の流れが停滞させ、瘀血が生じて無月経になった時でも程度が軽ければ安中散で治る。」

と考えています。

配合される延胡索は活血化瘀薬に属し、桂皮は経寒血滞の無月経に使われますし、茴香は温腎散寒作用も持ちます。

こういった組み合わせにより、冷えが原因である無月経にも使えると和田先生は教えてくださったのではないでしょうか。

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