生薬の解説を行っていきます。
漢方薬は生薬が集まって出来たものなので、生薬一つ一つの理解は選薬する上で必須の条件です。
今回は茵蔯蒿について書いていきます。
まずは頭に馴染みやすくする為に本草鋼目にある茵蔯蒿のエピソードを現代人にも分かりやすく書いていきます。
伝わりやすくするために一部書いてない内容も想像で追加しています。
茵蔯蒿で黄疸が取れた話
あるところに風邪をひいてから一年近く黄疸に悩まされているお坊さんがいました。
始まりは風邪でしたが、お坊さんは最初の対応が不十分だったため、発熱に伴い、顔面と全身に黄疸が現れて続けています。
もちろん医師にもかかったのですが、指導された食事療法を行っても全然治りません。
流石に長年苦しんで辛いので、別の評判の良いお医者さんにかかることにしました。
その先生は患者を診た後、「これを飲みなさい」と数種類の生薬が入った薬を渡してくれました。
それを煎じて飲むと、5日後に三分の一、10日後に三分の二と症状が軽減していき、20日後にはとうとう治り切ってしまいました。
その時渡された薬に配合された生薬が
「茵蔯蒿・山梔子・秦艽・升麻」だったのです。
茵蔯蒿使用のポイントは黄疸
先程のエピソードを紹介しているところから、何となく「茵蔯蒿は黄疸に効く」と言うことがお分かり頂けたと思います。
しかし、中医学を勉強していくと黄疸にも①陽黄②陰黄の二種類あることを知ります。
①陽黄…鮮やかな黄色が身体や目に現れる。一説では湿熱が肝胆に影響して起こると考えています。
②陰黄…黒ずんだ黄疸。寒湿が阻滞する事で起こる。陽黄が慢性化したり、脾陽虚弱・寒涼性の薬を使いすぎが原因として多い。
湿熱で起こるか寒湿で起こるかの違いですね。
そして起こる疑問が
「茵蔯蒿はどちらの黄疸に効くのだろう?」です。
その疑問に対しての正解は茵蔯蒿は他薬との組み合わせ次第でどちらにも使える生薬です。
私が感銘を受けた本である中薬の配合の作者、丁光迪先生は作中にて
「茵蔯を主として、大黄を合わせれば作用は寒性になり、附子と合わせれば熱性となるのである。」
と述べられております。
このあたりは茵蔯朮附湯・茵蔯蒿湯・茵蔯梔子大黄湯などをの勉強で理解できます。
黄疸でお悩みの方に対しては茵蔯蒿の入った漢方薬を考えてみても良いと思います。