痰の概要
痰は体内の津液の代謝異常により、津液が留まって凝集されて生まれる病理産物です。
痰飲・瘀血はともに何等かの病因が臓腑機能を失調させて生まれたゴミみたいなものですので、心身の機能を妨害することはあれど役立つ事はありません。
現代医学では「カー、ペッ」と吐き出すものが痰とのイメージですが、中医学ではあれ以外にも痰に属するものはあります。
まず、痰の大分類なのですが、①狭義の痰 ②広義の痰 の二種類があります。
①狭義の痰
咽喉や口鼻から出る鼻水・唾・涎を指します。「カー、ペッ」と吐き出す痰はこちらの分類ですね。
②広義の痰
津液に発生した病変を原因として起こる痰証です。
痰は目に見えるものだけではなく、体内にも存在し、悪さをするのですがそれはこちらに属します。
寿世保元と言う医学書では痰に対し
「全身を移動して溢れ、到達できない場所がない…身体の上から下まで到達することができ、百病に変化する。」
と述べており、痰は広範囲に影響を及ぼすので、色んな疾患が痰で起こりうる事が分かります。
実際痰は肺・心・脾・肝・腎・経絡・筋骨・皮膚の内側など様々な部位に病変を引き起こし、症状も多岐にわたります。
痰が出来る原因
痰は津液の代謝障害の為に生まれたゴミとの事でしたね。
なら、何故津液の代謝障害が起きるのか?を考える必要があります。
結論から述べると冒頭で書いた臓腑の機能失調、これが痰を作る原因となります。
臓腑にも色々ありますが、脾・肺・腎・肝・三焦が特に関係してきます。
①脾
脾には運化と言う作用があります。
運化とは持ち上げる作用で、運とは輸送の意味を持ちます。
脾には運化水液という水を肺に持ち上げて輸送してもらい、肺から全身に配ってもらう流れがあります。
その運化機能が働かなければ水は脾に留まって湿→痰となります。
②肺
肺は水液を体表に配る宣散作用・膀胱へ送る粛降作用があります。
例えば肺が外邪(外的要因による邪気)の影響を受けなどすると、肺の宣散・粛降作用が機能しなくなり、津液が留まって痰へと変化していきます。
③腎
腎陰が虚すと、陰虚火旺と言い仮性熱症状が生まれてきます。
この火は津液を焼いて凝集させ、痰へと変化させます。
また、腎陽虚のため腎の気化作用が働かずに水湿→痰へと変化します。
火が無ければ水は動きませんが、腎の火は陽気のその大元で、火力不足で水を動かせない為に湿が一カ所に留まって痰へ変化すると言う事です。
④肝
肝は疏泄を主り、気の流れに大きく影響します。
この疏泄機能が狂うと気鬱になり、鬱が熱化すると津液が焼かれて痰へと変化します。
⑤三焦
三焦は、大きな水道を通じさせる管であり、水が流れる通路です。
通路が塞がっていれば水は先へ行く事ができません。
こうして留まった水飲は痰へと変化していきます。
では実際、痰ではどんな症状が起こるのかは次回書いていこうと思います。