脂質異常症は、初期には自覚症状が全くないため、ほとんどが健康診断によって発見されます。
健康診断も受けず、自分が脂質異常症だと気づかずにそのまま過ごせば動脈硬化のリスクがどんどんと高くなりますから、1年に1回は健康診断を受けることをおすすめします。
では、脂質異常症と診断されるとどんな治療が行われるのでしょうか。
心臓の冠動脈の病気などの明らかな動脈硬化の病気がない場合には、脂質異常症の治療は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」が基本となります。
脂質異常症の食事療法

脂質異常症(高脂血症)の食事療法は2つの段階によって行われ、第一段階として1日に摂取するエネルギー量を適正にし、炭水化物やたんぱく質、脂肪の摂取配分をバランス良く改善し、肥満がある場合は肥満の是正を優先します。
第一段階を行っても血液中の脂質が目標値に達しない場合は第二段階へと移り、脂質異常のタイプに応じてより細かく制限を加えていきます。
総摂取エネルギーの適正化
エネルギーを過剰に摂取すると肝臓でのコレステロールの合成が促進され、さらに余分なエネルギーは肝臓で中性脂肪(トリグリセライド)に合成され、血液中の中性脂肪値も高くなります。
【適正エネルギー摂取量】=[標準体重×(25~30)]Kcal
(【標準体重】=[身長(m)×身長(m)×22]:BMIによる標準体重)
例えば、身長170㎝(1.7m)ならば、1.7×1.7×22=63.58kgが標準体重で適正エネルギー摂取量は、約1,590Kcal~1,900Kcalとなります。
肥満のある場合は、標準体重に近づけましょう。
良質タンパク質の適量摂取
LDLコレステロール(悪玉)を減らしHDLコレステロール(善玉)を増やすためには、脂肪の多い肉や卵を減らし魚や大豆製品からのタンパク質摂取を心がけ、エネルギー量は全体の15~20%を目安とします。
良質脂肪の適量摂取
脂肪も動物性はできる限り控え、植物性や魚肉性脂肪を多くし、エネルギー量は全体の20~25%を目安とします。
結果として、炭水化物からのエネルギー摂取は全体の60%前後となります。
その他の栄養素の適量摂取
- コレステロール:1日300mg以下
- コレステロールはレバーやモツなどの内臓類や魚の中でも内臓と魚卵などに多く含まれているので注意が必要です。
- 食物繊維:1日25g以上
- 目安となる1日の野菜の量は350g前後で、にんじんや小松菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜を半分くらいにしましょう。
- アルコール:1日25g以下
- アルコール20~25gに相当するアルコール飲料
- ビール:中瓶1本(500ml)
- 日本酒:1合(180ml)
- 焼酎:0.5合(90ml)
- ウィスキー:ダブル1杯(60ml)
- ワイン:グラス2杯(200ml)
- 甘いものの制限
- 甘いものの摂り過ぎは中性脂肪(トリグリセライド)を増加させるため、砂糖の多い菓子類や嗜好飲料は控え、料理に使用する砂糖も少なめにしましょう。
- 塩分摂取の制限
- 食塩の摂り過ぎは血圧を上げる要因となり、高血圧症を合併すると動脈硬化が進みます。
以上のような食事療法で血清脂質が目標値に達しない場合には、脂質異常のタイプに応じて第二段階の食事療法へ進みます。
高LDLコレステロール血症タイプの第二段階
第一段階では20~25%としていた脂質からのエネルギー量を全体の20%以下とします。
そして、コレステロール摂取量を1日200mg以下に制限します。
多価不飽和脂肪酸(P)、一価不飽和脂肪酸(M)、飽和脂肪酸(S)の比率は、3:4:3程度とします。
- 多価不飽和脂肪酸(P)が多い食品:植物油や魚油(イワシ、さんまなど)
- 一価不飽和脂肪酸(M)が多い食品:オリーブ油など
- 飽和脂肪酸(S)が多い食品:バターやラードなどの動物性脂肪、肉の脂身など
高トリグリセリド血症タイプの第二段階
アルコール摂取は原則として禁止です。
炭水化物の制限として、
- ごはんのおかわりは控えめにする。
- いも類はじゃが芋1日小1個程度。
- 果物は1日80kcal程度(みかんなら中2個、りんごなら中1/2個、バナナなら中1本程度)
砂糖は料理に使用する調味料に限定し、和菓子や洋菓子、清涼飲料水など甘いものは可能な限り控えます。
また、高コレステロール血症と高トリグリセライド血症両方のタイプの第二段階は、前2項目の療法のポイント全てを励行します。
運動療法
脂質異常症(高脂血症)の治療方法として「運動療法」があります。
運動は、まず体脂肪を燃焼させ肥満や中性脂肪(トリグリセライド)の値を改善に効果的で、
HDLコレステロール(善玉)を増加させます。
どの程度の強さの運動をどれくらいの時間、何回くらいするかなどは、担当の医師に相談しましょう。
脂質異常症(高脂血症)の「薬物療法」については、漢方と合わせて別項で解説する予定です。